“Healing Herb” セントーリー
東 昭史
晩年のエドワード・バッチはハーバリストを自認していた。ただし、バッチが語るハーブとは、おそらくふつうの薬草のことではない。それは神が授けた “Healing Herbs”、つまりフラワーエッセンスの植物のことであっただろう。
そのなかには、ふつうの薬草として使われていた植物も含まれている。セントーリーもそのひとつである。
セントーリーは古くから薬効が知られていた。古代ローマの医師ディオスコリデスの『薬物誌』にも収載され、いくつもの薬効が記されている(III-7)。
はじめに記されている薬効は、パップ剤として外用することで皮膚の傷や潰瘍に瘢痕形成を促すというはたらきである。
ベストセラー『ライフヒーリング』で知られる作家、療法家のルイーズ・L・ヘイは、同書で皮膚は個性を象徴するといっている。皮膚に問題があるのは、外部から威圧されて個性がおびやかされていることをあらわす。それはまさしくセントーリーのタイプが直面する課題そのものである。
また、傷は罪悪感や自己処罰、潰瘍は自分が役に立たないことへの恐れと関係するという。
セントーリーのタイプは人のよさが特徴であるが、その背景には周囲の人にとってよい人でないことに対する恐れや罪悪感があるのかもしれない。
セントーリーは神経の問題にも薬効がある。『薬物誌』には液汁を服用すると神経の疾患に効くとか、煎剤を浣腸薬にすることで坐骨神経痛に効くとある。そういわれると、セントーリーの植物体のかたちは、どこか逆立ちした人間の神経系のように見える。
人体の情報伝達器官である神経は、コミュニケーションを象徴すると、ヘイはいう。神経痛はコミュニケーションの苦労や自己処罰のあらわれであり、坐骨神経痛は未来への不安と関係する。
セントーリーのタイプはコミュニケーションの問題で苦労する。自分の考えを相手に伝えることが課題である。神経痛はそのことを気づかせてくれる体のサインなのだろう。薬草としてのセントーリーは体の神経痛を治癒に導く。そして、セントーリーのフラワーエッセンスは、その奥にある心の問題を癒してくれる。
バッチは体の症状と心の問題の関係を研究してフラワーエッセンスを開発した。薬草の体への効能はフラワーエッセンスの植物研究においても重要な要素である。
参考
ディオスコリデス(2022)『薬物誌』岸本良彦訳、八坂書房
ルイーズ・L・ヘイ(2012)『ライフヒーリング』LHTプロ目ジェクト訳、たま出版
2023年1月21日公開
東 昭史(あずま あきひと)
フラワーエッセンス研究家。エドワード・バッチの思想とエッセンスを中心に、日本の植物とエッセンスについても研究する。著書『バッチフラワー花と錬金術』、『ファー・イースト・フラワーエッセンスガイドブック』(共著)、 『ファー・イースト・フラワーエッセンスの魅力』、『ファー・イースト・フラワーエッセンスの研究』 (Kindle版)ほか。
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創刊号『虹とフラワーエッセンス』「天地をつなぐ虹の架け橋~ベイリーフラワーエッセンスから~」
第2号『豊かさへといざなう花の療法』「エドワード・バッチと豊かさ」
第3号『星とフラワーエッセンス』「夏至に花咲くスターチッスル」