表紙と裏表紙に纏わる物語②
~黄金色に染める白の花、夕暮れに染まる赤の花~
赤の章
いつもリトルプレスに心寄せてくださり、あたたかく応援くださって、
ほんとうにありがとうこざいます。
さて、今宵語らせていただくのは「表紙と裏表紙に纏わる物語」の裏表紙編になります。
マグカップに、こっくりと深みのある冬色のココアを注いで、
窓から差し込むやわらかな日差しを浴びながら、
のんびりとご覧くださいね。
「Coming Home」のもうひとつ扉をあけて、彼岸花があちこちに咲く、不思議な時空を越えた旅へ、
皆さまをご案内いたしましょう。
まずは、膝の上にぽんと小冊子を乗せてみてください。
表表紙には、白い榊の花が清らかな水の上に浮かぶ姿、「ファー・イースト・フラワーエッセンスのサカキの太陽法写真」が掲載されています。
では、それをくるりと裏返してみてください。
現れたのは、赤い彼岸花。
夕日の中、あの不死鳥のような花たちが、一面に咲いている景色を捉えた1枚です。
毒草として名高く、いくつもの怪しい異名を持つ彼岸花は、古くから日本人の生活にずっと寄り添ってきた植物でもあります。
幼い頃、夏になるとどこからともなく現れ、ふしぎな形に花ひらき、夕日を受けて、田んぼの畦道に照り光る姿。
ふらりと幽界から現れ出たかのような、その独特の立ち姿に、ある種の畏怖のようなものを感じながら、学校からの帰り道、赤く染まる風景を眺めていたことを思い出します。
日本の植物で作られたファー・イースト・フラワーエッセンスには、「ヒガンバナ」のボトルがあります。
キーワードは「過去にさかのぼる問題の解決。抑圧したネガティブな感情の解放。執着から離れた境地。強い執着や物質欲。先祖やカルマの問題。死と再生」。
(「ファー・イースト・フラワーエッセンスガイドブック」より抜粋)
彼岸花は、花の咲き方や葉のつけ方など、季節を通してその生態を観察すると、まるで自然界のサイクルから外れているように感じられます。
時に私たちは、人生のある時期、彼岸花のもつ「奇妙な時間の歪」に囚われ、逆回転の動きに嵌ってしまったように感じることがあります。
この花のエッセンスをとることにより、私たちの中に、気づきが生まれます。
私たちが、潮の満ち引き、生と死、始まりと終わりというような、自然界の大きな流れに戻ってゆくことを、彼岸花は力強くサポートしてくれるのです。
私たちはいつも、登る太陽から生まれたての光を受け取り、沈む太陽から古きものの手放しの恩恵を与えられるという、その自然界のサイクルの中に生きています。
この花のフラワーエッセンスは、太陽の昇降のように、所有することと手放すことは一連の自然な流れなのだということを深く理解し、強い物質的な執着をリリースすることをサポートしてくれるのだと、そう感じるのです。
そして私は時々、思うのです。
このエッセンスによりもたらされる癒しは、まるで「夕暮れに照らされる、一面の彼岸花の咲く赤い風景」に似ているのだ、と。
夏の太陽が、山の向こうにその姿を隠す、その間際に。
山里が暗き闇にふたたび包まれる、その一瞬前に。
夕暮れに燃える太陽が、村里にある全てのものを、その炎のような色で慈悲深く包み込み、私たちがその身にしっかりと抱えていた葛藤を、慈しみの熱で溶かしてくれているような感覚。
物質への執着を外すということは、ぎゅっと握っていたものをいさぎよく手離し、内なるスペースを明け、新しき良きものを迎え入れる、聖なる儀式でもあります。
そしてきっと、止まらずに刻々と変化し、進化し続けようとする、私たち地球の生命(いのち)への、豊かな贈り物でもあるのです。
豊かさというテーマを掲げたリトルプレスの、くるりと反転した世界、その「もうひとつの表紙」に、この赤い花が咲いている。
その理由を、今宵、皆さまにお届けいたしました。
それでは、もういちど膝の上にリトルプレスを置いていただけますか。
ふたたび、この小さな本のページを捲りながら、そして豊かにイメージを膨らませながら、彼岸花の咲く「日本の原風景」に、アクセスしてみてください。
私たちの思い出の中に咲く、赤い彼岸花へとつながる「深い癒しのためのタイムトラベル」。
そのふしぎな旅を、裏表紙の写真とともに、どうぞお楽しみくださいね。
白き冬の日に、赤い夏の花を想いながら。
2022年1月27日
文 Coming Home編集部 浅野典子
写真 同 丸山かおる